A-2.道成寺縁起絵巻(安珍清姫編) 売約済

道成寺縁起絵巻の安珍清姫編です。
熊野を行脚する僧(安珍)と宿の娘(清姫)の悲劇的な物語として古くから知られますが、一方で仏法の功徳による転生を描いた霊験譚となっています。
こうした物語は仏法の功徳を説く目的とエンターテイメントを兼ねて絵解きにして広く親しまれたことで知られます。


 第一段

醍醐天皇の御代、奥州の白川から「あんちん」という一人の僧が三熊野詣でにやってきった。

第二段

あんちんは紀伊国牟楼郡で一泊することに。

第三段

宿の娘と出会う。

第四段

夜半に娘がやって来て、このまま居続けるよう懇願するも、僧は三熊野参詣の志があるので断る。しかし、ついに参詣を終えた下向の折に立ち寄ると約束をする。

↑上巻収録分
↓下巻収録に分かれます。

尚、最古の道成寺縁起絵巻である道成寺本には、これより前は詞書のみで挿画はありません。

第五段

旅の僧と娘の門送りのシーン。
「先の世の契りのほどを三熊野乃神のしるべもだどなかるべき」(娘)
「三熊野の神のしるべと聞からになを行末のたのもしきかな」(僧)
熊野詣を終えたら必ず戻ってくると約束して再び行脚に出る僧。


第六段 

必ず戻る約束を反故にした僧を道行く人に尋ねながら探し回る娘。


第七段 

上野で旅の僧に一旦追いつくが再び逃げられる。


第八段 

旅の僧を追う途中、娘が腰かけて息を吐くと火焔を吐き鬼神の相に変化していた。
僧は心中で仏を念じ「欲知過去因 見其現在果 欲知未来果 見其現在因」と経文を唱える。


第九段 



僧は一里半逃げて天田川までやってくると荷物を捨てて舟で川を渡る。(天田川は日高川の支流)


第十段 



鬼神となった女は船頭に頼んで舟で天田川を渡ろうとするが叶わず大蛇に身を変えて川を渡る。


第十一段 

道成寺に逃げ込んだ旅の僧は老僧に自分の隠匿を乞う。


第十二段 

寺の者の手を借りて梵鐘の中に隠れる旅の僧。薙刀や太刀をたばさんで構える寺の僧俗。


第十三段 

大蛇に化けた娘は道成寺のは六十二段の石段を上り、鐘に隠れた旅の僧を見つけ梵鐘に巻きつくと鐘は湯となり火焔が上がる。


第十四段 

大蛇は道成寺の西の入り江に入り死ぬ。
僧俗が集まり水をかけると炭化した僧の遺体が発見される。


第十五段

道成寺の老僧(天台法師)の夢に二匹の蛇が出てきて、自分達は蛇になった僧と娘だという。


第十六段

蛇道に堕ちた僧と娘の供養のため天台法師は僧俗を集め経を誦読し法要を行う。


第十七段

再び老僧の夢の中に天人となった僧と娘が現れ、二人は経の功徳により天上界に転生した事を知る。



左:巻末の紙背に書かれた所持人の書付。津波の被害とそれに備えを注意の文言が見えます。所持人の名前は消してあります。
右:箱には多くの描き込みがありますが都澤?村、義帷?との文字が見えます。箱の裏にも文字がありますが、摩耗で判読できません。
箱は「宮子姫編」と「安珍清姫編」が一巻になっていた当初のものと思われます。

価格 お問い合わせ願います。(分売不可)

サイズ 縦274o、12370o ※当巻物自体は9900o

紙本著色、巻子、江戸時代

ご案内の絵巻は旅の僧安珍の出自、安珍と娘との出会、二人の悲劇的な最期、さらに蛇道に落ちた二人が天上界に転生するまでを十七段に分け、それぞれカナ文字交じりの詞書と絵からなっています。画風は御伽草子風でありながら、人物の表情を生き生きと描き、背景の床の間の仏像や襖絵などのディテールが描き込まれています。
ともすればグロテスクな要素の多い物語ですが、描かれた人物はどこか軽妙でユーモラスです。

保存状態は全体に実際に絵解きとして長年使われたような使用感があり、紙の上下に傷みが生じています。
また、経年の汚れやシミが部分的に生じています。
本紙の表面はシワなどの使用感はありますが、幸いにも大きな破れ、虫食いはありません。
絵の順序は物語の展開と矛盾はなく、途中の欠落や錯巻を思わせる不自然な個所はありません。(上下巻とも)

制作年は上巻の「宮子姫編」にある元禄元年と思われ、作者も同一です。
箱は元来の長大な一巻であった時のオリジナルの箱と思われる、とても古い箱に入っています。